Eternal wonder
なごみまくりの徒然日記。暇つぶしにどうぞ。

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I wish                 

息が詰まりそうな空気の中、俺は黙って佇んでいた。
皆が気をつかってくれているのがわかればわかるほど、俺のプライドは傷つき、だんだんと闇の中へ堕ちていった。まるで深海の中にいるようだった。
ベラ。いつかは君のことを穏やかな目で見守ることができるようになるのだろうか。
言葉の刃で君を傷つけたことを、幼い頃の戯れだと笑って片付けられるときが来るのだろうか。
多分、来るとしてもそれは遠い未来の話で、今は絶対に考えられないことだ。
そう自分の中でつぶやくと、俺は黙って視線をゆらがせた。
ここに来るのは、いつもつらい。
狼になっているだけに、周りのやつらには心の中が筒抜けだ。その上に、この森はベラとの思い出がありすぎた。
「普通の」人間として、ただ気楽に生きていればよかったあの頃。
たくさんの会話が耳によみがえるような気がして、俺は目を閉じた。
そして、あの事件。
あれから1ヶ月が過ぎ去った今でも、俺の気持ちは何一つ変わってはいない。
心の底から好きになった人が、人間としての人生を終え吸血鬼になってしまうなんて、誰が想像できるだろう。おまけにその人が自ら進んでそうなったなんて。
もしも何かの事故でそうなってしまうのなら、まだ怒りをぶつける相手がいるだけいい。
けれど、ごめんなさいと切なげにつぶやいて去っていった人に、どう怒れというのだろう。
今でも、もしもベラの気持ちを掴むことができていたら、彼女は人間として幸福な人生を送ることができたのにと思うことがある。
あのときあの女占い師が現れなければ―――。
深い悲しみに似た後悔は、とどまることなくあふれてくる。
昔のように、どうしようもなくて暴れてただ毎日を過ごすだけだったのよりはマシになったけれど、今でも胸の奥がひきつれるように痛むのは変わらない。
黙って深呼吸を繰り返す俺を、サムはただそばで見つめていた。
表情こそ無表情だったけれど、その目には深い同情が流れていた。俺のつらい気持ちを、最も近く感じているからかもしれない。かつての自らの後悔とともに。


だいぶ前の話だ。
サムが狼になったばかりの頃、リアと別れたとき。
リアに本当のことを話せずに、サムはひどく苦しんだ。今も苦しんでいるのは同じだけれど。
そして、違う意味の苦しみも体験せざるをえなかった。
エミリーの傷。あの傷を見るたびに、サムがつらい思いをしているのは、みんなが知っている。
そして、エミリーを普通だったらありえないぐらいに愛しているということも。
"刻印"という名の謎のものによって、愛する人を決められるなんて理不尽だと思うのは俺だけだろうか。
多分、本当に刻印が自分に降りかかれば、そんなことは思いもしないんだろう。
だけど、今の俺には多分理解できない代物だ。
ベラを好きだったころの自分を忘れるようなものだ。そんなの耐えられない。
だけど、実際にクイルにも起こった。
サムだって、リアと付き合っていたのにも関わらず刻印は現れた。
俺には現れないと、どうして断言できる?
もしも現れたら、ベラのことをすべて諦められるのだろうか?
そうしたらベラは安心するんだろうなぁとぽつりと考える自分に嫌気がさして、俺は気を紛らわせるように辺りの景色をただ頭の中へインプットし続けた。


「ジェイコブ、ここを任せてもいいか?」
突然静寂を破ったのは、エンブリーだった。
今、俺たちは境界近くの森で、パトロールをしている。もっとも、カレンたち―この名を思い出すたびに、胸の奥がずきんとする―がここフォークスを去ってからは敵なんて一人も現れていないけれど。
「・・・あぁ。大丈夫だ」
「クイルとお前は反対側のビーチを見て来い」
サムの指示にエンブリーとクイルは頷いて、勢いよく走っていった。
再びあたりが沈黙に包まれ、俺の近くにはサムだけになった。少しだけリラックスできるような気がして、俺はぎゅっと握っていた手を少しほどいた。
狼人間になる前はサムのことを毛嫌いしていたんだっけ。
ぼんやりとそんなことを思い出し、俺は少しだけ笑みを浮かべた。そうだ、ベラと一緒になってギャング呼ばわりしたこともあったな。今じゃ、笑い飛ばす冗談にもなりはしない。
「まだ大変なんだな」
ぽつりとつぶやかれた言葉に、俺は驚いてサムを見つめた。まるで独り言のような声だった。
「えっ・・・?」
「見てればわかる。つらいんだろう?」
俺はぎゅっと唇をかんだ。皆の前ではできるだけ見せないようにしてきたつもりだった。でもやっぱりサムにはいつも見抜かれてしまう。
「あぁ」
「きっといつかは笑えるようになるだろう。それまでの我慢だ」
サムの無表情な目に、少しだけ哀愁が漂った気がして、俺は目を瞬かせた。
「はい」
「もっと周りに頼ってやれ」
そう一言言うと、サムは俺に向かってそっと微笑んだ。


眠りにつく前に、一枚の写真を見る。出来上がったばかりのバイクの前で、ベラと並んで撮った写真。エドワードがいなかったときだ。
赤い光沢を放つ、鮮やかなバイクの前でピースサインをするベラの姿は、いつ見ても変わらない。
もし望めば、今すぐにでも会えそうな雰囲気に、俺は力を入れすぎた指をゆっくりと写真から引き離した。間違って破きそうになるたびに、俺は慌てて手を離す。
もう手放して忘れてもいい頃なのに、こんな風だからいつまでも吹っ切れないのかもしれない。
そう思って、俺は闇の中で一人ため息をついた。どこまでも一人になりたいと願いながらも、それでも一人で生きていく強さがない自分に、どうしていいかわからない。誰か、いやベラにそばにいてほしいと思いつつも、もしも出会ったら反射的に襲い掛かってしまうかもしれないとも思う。
矛盾する気持ちを抱えたまま、俺はベッドへ倒れこんで目を閉じた。
「俺は何にもできない出来損ないだな・・・」
苦笑してつぶやくと、夜空の星が暗くなったような気がした。
ゆっくりと眠りに落ちる直前、彼女の声がぼんやりと遠くに聞こえたように思えたけれど、そのまま夢の中へと俺はいざなわれていった。


いつもよりずっと晴れた昼間。
うっそうとしているはずの森にも、太陽からの明るい光が颯爽と差し込んでいる。まぶしさに目を細める仲間たちに俺もならう。
「クイル、ちょっとあっちに行ってくる」
普段の小道から離れた場所を指差し言った俺に、クイルは訝しげな顔をした。
「どこへ行くんだ?」
「ちょっと、用事を思い出した」
まともな言い訳を考えてくるべきだったと後悔しつつも、俺はぼそりとつぶやいた。
「サムには言ってあるから」
これはウソだ。そんなことを言ってあるわけがない。
でもこれは、どうしても一人で行きたかった。他人がいたら、自分が求めたものは見つからないような気がした。
「そうなのか?じゃぁ、俺がこれから先は見ておく」
「サンキュ」
なぜか切なさがこみ上げてきて、泣き笑いのような表情で言うと、さすがにクイルは変な顔をした。
「お前、何かあったのか?」
「・・・別に」
慌ててふいと外を向くと、クイルは首をかしげながらも通してくれた。
「お前、夕飯までには帰ってくるんだろ?間に合わないなら俺が代わりに食っといてやる」
「あぁ、帰るから心配ない」
振り向きざまに答えると、クイルのわざとらしいため息が聞こえて俺はくすりと笑みを漏らした。


きつい山道を登りながら、俺はぼんやりとここを探していた頃のことを思い出していた。
ベラが探したいと言った場所。そこで運悪くも(ベラのことを考えると運が良かったのだろうか?)ローランという吸血鬼に出くわした。
今思えば、きっとあの場所はエドワードとの思い出の場所だったのだろう。
俺には話さなかったけれど、あの頃のベラは何かとあいつにつながるものを探し求めていたような気がする。多分、探したい反面傷つくことを恐れていた。だから俺にも頼んだりしたんだろうなとぼんやりと思って、俺は苦笑した。結局俺は使いまわしの道具か。
それでもなぜか怒る気にはなれないのがベラだった。
きっと、それほどに好きだったんだと、今さらに気づく。
多分、ベラがあいつを好きでも、全然関係なかった。ただそばにいられれば満足だったから、あんな風にずっと友達のようにいられた。
あいつをライバル視しながらも、心のどこかでベラはあいつを選ぶとわかっていたのかもしれない。だから、最初から強気だった。負けても胸をはれるように。


たどりついた草原で座り込むと、俺はばったりと横になって流れ行く雲をじっと見つめた。
こんな風に穏やかで何も考えずに過ごすのは久しぶりかもしれないと思う。
狼になったときだって、何かは頭の中にあった。多分、何かは。
頬をなでるあたたかい風に目を細めながら、ジェイコブは黙って起き上がった。
「ここによく来てたんだろうな」
多分、ここはベラとあいつにとって幸せの象徴の場所だったんだろう。だから、こんなにもこの草原は輝いてる。
「・・・まるであいつみたいだな」
誰よりもキザで、カッコつけの吸血野郎。
そう心の中で悪態をついた後、俺はぎゅっと目を閉じて考えた。
だけど、ベラを大切に想うことにかけては、俺と同等かな、と。
俺もきっとまた恋をする。
そのときまた出会えても出会えなくても、君の幸せを願ってるよと、誰も答えることのない空にそっとつぶやいた。

旧拍手お礼文(加筆修正済み)。3期終了後から2年後のジェイコブ。きっと彼もつらい思いをいつかは乗り越えていくはず。いや、そうあって欲しいです。短編調?

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