Eternal wonder
なごみまくりの徒然日記。暇つぶしにどうぞ。

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聖夜の祈り                 

フォークスの冬は寒い。
吐く息が白く曇っていくのを見つめながら、ベラはため息をついた。
外は雪が降っている。今は駐車場まで歩くのさえも億劫だった。
普通だったら、クリスマスに雪が降ったことを皆が喜ぶのだろう。けれど、到底そんな気持ちにはなれそうにない。寒いのが嫌いな上に、クリスマスなどのイベントは超がつくほど苦手なのだ。
浮き足立って見えるクラスメイトたちを背に、ベラはのろのろと荷物をまとめた。
今日は特に用事もないし、買出しも必要ない。たまには図書室にでも行って時間をつぶそうか。
読みたい本なんてなかったけれど、今雪の中へ出て行くのはあまり得策には思えない。
ベラはしっかりと上着のボタンをとめると、つやつやとした冷たいタイルの上を歩きながら図書室に向かった。


毎日は退屈だ。もはや、エドワードにとって時間は何の意味も成さなくなった。
ただ、黙々と偽りの姿で生活するだけの毎日。
本当の姿で安らげるのは、家族といるときだけだった。
――暇を持て余し、これ以上何も起こりはしないと諦めていた人生に彼女が現れるまでは。
イザベラ・マリー・スワン。
最初に出会ったときの香りはこの世のどんなものよりも麗しく、そしてすさまじい精神力を試すものだった。けれど、何度か彼女に出会うたびに、少しずつ耐えられるようになってきた。
それをこっそり誇りに思いながら、エドワードはかすかに自嘲的な笑みを浮かべた。
何もすることがないと、どうしても彼女のことを考えてしまう。
そう思って図書室に来たのに、あるのはどれも読んだ本ばかりで、エドワードは顔をしかめた。
自分が彼女に近づくのは許されない。
それをわかっていても、ベラはそれ以上に誘惑の存在だった。
くるくると変わるユニークな表情。時たま真っ赤に染め上がる頬。
吸血鬼でなくたってくらくらとするのが当たり前だ。もっとも、本人はそれに気がついてないようだが。
ついこないだ、初めてベラの部屋に入った。
本当はいけないことだとわかっていても、止められなかった。
彼女の穏やかな寝顔を見られるだけで、わけもなく安心できたから。
エドワード、と自分の名を呼んでくれたとき。今までにない心地よさを感じたのは事実だ。もちろん驚きもあったけれど。
これから、ぼくは彼女に近づくことになるのだろうか。
不安は大きく、いつ自分の抑制力が抑えられなくなるかわからない。
それでも、少しだけでいい。ほんの少しだけ、ベラを知りたい。
そうしたら、もう満足しておとなしくしよう。
エドワードはそう心の中でつぶやいて、そっと本棚に手をのばした。
「エドワード?」
考えごとに没頭していたせいで、誰かが近づいてきたことに気づかなかった。
あせりを感じながら、その声に振り向く。
「ベラ」
どうしてこんなにもほっとしているのだろう。ただ、彼女にたまたま会っただけじゃないか。
おまけに、5時間目の生物の授業でも一緒だったのに。
「あなたも・・・ここにいるとは思わなかったわ」
ためらいがちにつぶやくベラに苦笑して、エドワードは伸ばしかけていた手を戻した。
「ぼくも君に会うとは思ってなかったよ。君はここの常連ではないよね」
「そう、ね。今日は雪が降ってて、何となく駐車場まで行くのが面倒だったから。たまには寄ってみようかなって」
うつむいて話していたベラが、一度だけ好奇心をのぞかせながらぼくの方を見た。なぜ、こんなにもぼくに警戒心を抱かないのだろうと不思議に思いつつ、ぼくはまっすぐに彼女を見つめる。
そんなぼくに圧倒されたのか、おたおたと周りを見渡すベラに、少しだけ反省して瞳の力を弱めた。
「そうか」
「今日はクリスマスね。あなたは、家でお祝いをしないの?」
ベラの言葉に、少しだけ戸惑う。
「・・・あぁ。ぼくたちは敬虔なクリスチャンじゃないから」
冗談めかして答えると、ベラはかすかに微笑んだ。
「あたしと同じだわ」
「君は、信仰というよりもイベントの好き嫌いが問題なんじゃないのか」
「よく・・・わかるわね」
驚いたように言われて、ぼくははっとした。
そうだ、彼女はぼくにはそんなことを言っていない。チャーリーに言ってるだけだった。
「ぼくは人の心を読むのが得意なんだ」
慌てて笑いながら言うと、ベラは不満げに眉をひそめた。
「そうね、あなたがそうやって何かを隠そうとしてるのは知ってるわ」
「・・・君には敵わないな」
降参の意味を込めながら、ぼくは困った顔をしてささやいた。どうして彼女が相手だと、すべてが上手くいかないんだろう。
「よくそう言われるわ」
その微笑みに心を奪われながら、ぼくは何回か瞬きを繰り返し、極上の笑みを返した。
ふと窓の外を眺めると、白い雪の華は降っていなかった。
「もう雪がやんだみたいだ。よければ駐車場まで送るよ」
そう言われて初めて気づいたかのように視線を外したベラが、ほっとしたようにため息をもらす。
「ホント、雨も降ってないわ、ラッキーね」
彼女の歩幅に合わせながら、ぼくたちはゆっくりと図書室を出た。
「家まで送ってもいくよ」
「大丈夫よ、そんなことしなくても」
ピックアップの前で慌てたように否定するベラに、ぼくは肩をすくめると言った。
「・・・そうか。じゃあ、また明日」
「ええ。明日ね」
そんな他愛もない言葉で締めくくりながら、ぼくはそっとベラの頬を両手で包んだ。
冷気にさらされひんやりとしているが、かすかに温かさがある頬。
驚いたように見開かれる瞳をゆっくりと覗き込んで、ぼくはささやいた。
「運転には気をつけるんだよ、ベラ」
馬鹿にされていると思ったのか、半ば夢見心地のようにとろんとしていた瞳がきゅっと狭められる。
「ご心配は無用よ」
そう言い捨てて、さっさとピックアップに乗り込む彼女に苦笑する。
ベラがバックミラーに映るぼくを見つめているのを感じながら、ぼくは車を見送った。


夜はゆっくりと更けていく。
静かな住宅街の中のひとつに、ぼくはこっそりと入り込んだ。もちろん、チャーリーには見つからない。
目当ての部屋は二階だ。
静かにドアを開けると、いつも通りベッドの上には安らかに眠っているベラがいた。
「ベラ・・・」
そっと愛おしい寝顔を見つめ、寝言をつぶやく彼女に苦笑する。
「君にはわからないだろうな。この気持ちが」
こんなにも守りたいのに、守るどころか傷つけてしまうかもしれない、恐れと苦しみが入り混じった気持ち。せめて君がぼくに何の関心も払わなければ良かったのに、と思ってはみても何も変わらないことは自分が一番わかっていた。
「もうすぐ12時か・・・」
真夜中だというのに、かすかに喧騒が聞こえてきて、エドワードは顔をしかめた。
「こんな時間に何をやってるんだ」
そうつぶやいて、はたと気づく。今日はクリスマスだったということに。
楽しそうな団欒の声に、エドワードは目を閉じた。
かすかに残る、人間の頃の記憶。
あたたかい空気の中で、色とりどりの飾りをつけたクリスマスツリーを眺めた日。父も母も、このときだけはどんなことも笑って許してくれた。プレゼントを待ちわびて、なかなか寝付けなかった夜。家族と交換するクリスマスカードのデコレーションは、何よりも楽しみだった。
ずっと昔のことを思い出し、エドワードはふっと笑みをこぼした。
もう、あんな風にクリスマスを祝うことは二度とない。今までそう思ってきた。
けれど、ベラがいるとそんなことまでをも望んでしまう。
いつか、彼女とともにクリスマスや、誕生日を祝えるようになりたいと祈る自分がいる。
――叶わないはずの夢。
誰もが大切な家族や恋人と過ごす聖夜に、こんなことをあてもなく考える自分が嫌になって、エドワードは苦笑しつつ首を振った。
いつかは、きっとベラから離れなければいけなくなるのに、こんな風に心を寄せている。
「・・・ここを離れるとき、余計につらくなるだけなのに」
今はまだ自分がどうしたいのかもつかめないままだ。
エドワードはゆっくりと彼女の頬に片手を滑らせると、寂しげに微笑んだ。
「いつかは・・・君のことを忘れることができるのかな。今はこんなにも君を想う気持ちで胸が苦しいのに」
そうささやいて、エドワードはじっとベラを見つめた。
「エドワード」
突然、しっかりとした口調で言われ、エドワードはどきっとした。
「ベラ?」
つぶやいたきり、寝返りを打つベラにほっと胸をなでおろしながらも、思わず笑みがこぼれる。
「いつも君には驚かされてばかりだ」
もしかしたら。サンタクロースのプレゼントの代わりに、この願いを。このクリスマス・イヴだけは叶わぬ願いも叶うはずと信じたい。
ただ、そばにいるだけでいい。君のかわいらしい寝言を聞けるのはぼくだけの特権だと思いたいから。
ひたすらに、瞳のきらめきを明日も見たいと、それだけを祈る。
「メリー・クリスマス、ベラ。今夜もいい夢を」


年末年始フリー配布小説(配布済)。私にしては珍しく第1期の頃のエドベラ。エドワードたちにとって、クリスマスはベラに出会うまで重要なイベントではなかったと思うのです。アリスは別かもしれませんが(笑)

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