Eternal wonder
なごみまくりの徒然日記。暇つぶしにどうぞ。

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誰かじゃなくて、君に。                 

今日の空は、青く澄みきっている。まるでぼくの心とは正反対だと、彼は自嘲気味に思った。
今彼はメキシコの南部にいる。
フォークスのように雨が降るわけもなかった。
エドワードは暗い部屋からふらりと出ると、のどの渇きを抑えながらそっと携帯電話を手にとった。
ずっと電話に出なかったから、何件もの留守番が入っている。
ため息をつく気にもなれない気分のまま、エドワードはゆっくりと電話を耳元へ当てた。
そうしなくても聞こえるのだが、習慣のせいだ。
受話器から流れてくる音声の一件目は、カーライルだった。
できるだけ早くカリフォルニアに戻ってくるように告げている。
まるで他人事のように聞き流しながら、エドワードは今日何度目かになるため息を吐き出した。
――あの日から。
すべてが変わってしまった。
あんな風に嘘をつくなんて、最低だったことは自分でもわかっている。
わかりすぎて、つらい。
ベラ。
愛しい人の名を、そっと空中に放つ。
誰も返事をすることのない空間に、音だけが無情に響いた。
今すぐに戻って早くよりを取り戻せと、感情は告げている。
でも、できなかった。自分がいることで、彼女の人生をめちゃくちゃにしてしまう。
自分の欲望に勝てるのは、ベラの幸せだけだ。
それすらも危うい感情の上で、自分は綱渡りをしているようなもの。
苦しくてどうしようもない絶望感に襲われるのは、今までで初めての経験だった。泣いても叫んでも取り戻すことのできない、未来。せめて誰かにやつ当たりできれば、どんなに楽だろうと思う。
でもそれをつくったのは自分だろう、とエドワードは苦々しげに笑った。
今まで、あんなにベラに頼っていたなんて、自分でも気づかなかった。
もちろん誰よりも大切な存在だったことは間違いない。
けれど、離れた瞬間、まるで心臓がないみたいな痛みに襲われるとは思っていなかった。
それに、愚かにも自分が彼女を守ってあげているような錯覚すら抱いていたことは事実だ。自分自身こそが一番危険な存在だというのに、笑わせる。けれど、彼女の守護天使のような気持ちでなら、そばにいても許されるのではないかと思っていた。
危険にさらすのではなく、他の危険から守ってやるのなら、罪にはならないと。
けれど、何て浅はかだったのだろう。怪物が乙女を守れるとでも言うのだろうか。まるで美女と野獣だ。
もう彼女なしで生きていくのは無理なのかもしれないと、一人思う。
自業自得だと思った瞬間、携帯がなった。
気をとられて発信者名を見ると、ロザリーだった。彼女がなぜ電話をしてくるのだろう。
今までかけてきたのは、カーライルかアリスがほとんどなのに。
苛立ちながらも興味をかき立てられ、ぼくは久しぶりに通話ボタンを押した。
「エドワード?」
「ロザリー。何の用だ?」
ぼくの言葉はかなりぶっきらぼうだった。
「あなたにいいことを教えてあげるわ」
彼女の口調はなぜか嬉しそうだった。そのことがぼくの苛立ちを増長する。
「別にいい」
そう言って電話を切ろうとする。その瞬間、ロザリーの一言が耳元に届いた。
「あなた、もう家に帰ってこられるのよ」
「どういう意味だ?」
息を呑んで訊ねる。
「だから、その言葉通りの意味よ。もうフォークスにベラは存在しないの。まぁフォークスに限らず世界中どこにでも当てはまるけれど」
半ばおもしろそうに言葉を紡ぐロザリーは、くすくすと笑った。
「ベラは・・・」
名前を言うだけで、胸に痛みが走ってぼくは少しためらった。
「引っ越したのか」
母親のもとへ行ったのだろうか。だとしたら、ぼくがここにいる必要はないのかもしれない。
何とリアクションしたらいいのかわからないまま、相手の声に耳を澄ませる。
「違うわ、エドワード」
一言一句区切るように発音したロザリーの言葉に、悪意はないように感じられた。
ぼくはただ、待った。
「彼女は、亡くなったの」
ナクナッタノ・・・言葉が空中でぼんやりと彷徨う。
意味がわからず、ぼくは幼稚園児のように誰が?と尋ねた。
「もちろんベラがよ、エドワード」
はっきりと通告された言葉に、思わず目をきつく閉じる。まるでその行為で、この世から自分が消えることができるかのように。
その瞬間、ぼくの指先は勝手に携帯の通話ボタンを切っていた。


嘘だ、嘘だ。
同じ言葉ばかりがぐるぐると頭の中で回る。
彼女はもうこの世にはいない・・・?そんな馬鹿な。
ぼくは狂ったように薄暗い部屋を歩き回った。だったらこんな世の中生きていたってしょうがない。
この何週間、ずっと感じていた絶望は、今では軽いものだと思える。
今の気分以上に最悪なものはないはずだ。
ぼくは意味もなく深く息を吐きながら、倒れこんでしまいそうな絶望と戦った。
「もしかしたら、間違いかもしれない」
一人でつぶやき、そうだとひたすら思いこむ。
そうだ、確かめればいい。ベラの家に電話するんだ。ただし、ぼくではなくカーライルの声で。
そう思いつくと、さっきよりは少し気分がマシになった。
落ち着いて、完璧に覚えている――そして忘れようと何度も努力した――電話番号をゆっくりと押していく。
「スワンです」
すぐに電話には、はりつめた少し乾いた声が出た。
ベラじゃない。多分、ジェイコブ・ブラックだろう。そう思って少し不安が募った。
彼女の声だったら、一瞬で聞き分けられる。もしベラだったらすぐに切ろうと思っていた。
「カーライルだ。チャーリーはいるか?」
「チャーリーは留守だ」
「・・・どこにいる?」
本気で不安がこみ上げてくる。ぼくは叫びそうになる衝動をこらえて訊ねた。
「葬儀に出てる」
暗い声にぼくは打ちのめされて、それと同時に真実を悟った。
ロザリーの言っていたことは本当だった。
ぼんやりと電話を切って、ただ立ちすくむ。暗闇の中で、ぼくの瞳は意味なく光を反射した。
彼女は・・・。ぼくは恐ろしくて、何もかも忘れてしまいたくなる。
即座に、この世に生きている意味はなくなったとぼくは思った。
何も考えずに、適当に持ち物をかばんにぶち込んでイタリアへ行く準備をする。
まるでそれは決められた運命のように、ぼくは違和感を抱かなかった。
「ベラ・・・どうしてこんなことに」
多分、ぼくは死んでも彼女とともに安らげることはない。それでも、生きているよりはマシだと思いたかった。たとえ救われるべき魂がなくても。
――そしてぼくはヴォルテッラに飛んだ。


3日後。
何もかも、すべては元通りになっていた。
彼女は無事で、今もぼくの目の前で安らかに目を閉じて眠っている。
何も心配することなんてないのよと、言外に言われているような気がしてぼくは頬を緩めた。
「ベラ・・・」
穏やかな寝息を立てて眠っているベラの頬をそっとなで、手首にそっとキスをする。
自分が間違っていることに気づいたのは、本当にぎりぎりだった。
彼女が目の前にいたにも関わらず、ぼくはのんきに死へとまっしぐらだったのだから、馬鹿にされて当然だ。
実際、本当に危なかった。
何とか無事に彼女を守りきれたから良かったけれど、もし失敗していたら、何もかもが終わるところだった。ベラやぼくだけではなく、アリスまでもが。
ベラにとって、ヴォルテッラはとても危険な街だ。
ぼくにとってのラ・トゥア・カンタンテ<歌姫>であるベラは、と同時に他の吸血鬼の注目をも当然集める。彼女の香りのよさは、かなり目立つから。
なのにベラは自分の危険も顧みず、ぼくを止めに来てくれたという事実に、思わず泣きたくなるぐらい嬉しくなる。
誰よりも大切に想っているから。
「君の魂を奪うなんて、絶対に無理だ」
掠れた声で耳元にささやく。
もちろん、永遠にそばにいてほしいのは当然の願いだ。
でも自分の欲望のままに彼女をバケモノにするなんて、とてもできない。
そうじゃなくても、ベラはぼくのせいで散々な目に合ってきた。
でも、せめて。
君のそばにいることだけは許して。そうじゃないと、ぼくはもう生きていけないから。
「誰かじゃだめなんだ。君じゃないと」
ぼくはそっとベラのおでこにキスを贈ってささやいた。
早くその明るいブラウンの瞳に、ぼくを映してほしいと、ただ願う。

10000打記念フリー小説。(フリー配布済)6巻で、エドワードが間違った情報を信じてしまう場面と、すべてが終わったあと。


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