Eternal wonder
なごみまくりの徒然日記。暇つぶしにどうぞ。

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声                 

ウソでしょ。
あたしは思わず深く息をはいた。そんな・・・ジェイコブまで。
自分が信じられなくなってくる。どうしてあたしの周りには普通の人間がいないわけ?!
エドワードが吸血鬼だっていうのを知ったときは、何とか信じられた。
だって、彼はどう見ても、何かが違ったから。
でもジェイコブは・・・ほとんど変わらない。怒っているときを除けば。なのに彼は狼人間だなんて。
伝説は一生にひとつで十分。ひとつだって多いのに。
かつて、あたしはエドワードたちの正体をジェイコブから聞き出した。
もちろん彼はそのとき、それを単なる伝説だと思ってた。だからそんなに軽々しく話せたんだけど。
あたしはそのとき彼の、エドワードの正体を知ってしまった。もしかしたら、知らないままの方がよかったのかもしれない。
そうすれば―――今のように苦しむこともなかったはず。まるで酸素不足の金魚のように。
でもあたしは知ってしまった。もう過去は変えられない。
あたしは耐えるしかない。
危険なことをしようとすると、声が聞こえることに気がついたのは、せめてもの慰めとなった。
彼の声が聞けるのなら、あたしは危険なことをしでかす覚悟があるもの。
というより、彼がいない世界で安全に暮らしたところで何になる?メリットが何もないことに誰も努力をしないのと同じように、あたしもリスクを冒さずにつまらない人生を送るつもりはない。


決心したのは、あの危険で、かつ魅力的な"遊び"をしているラプッシュの子たちが原因。
まあ、確実にあたしより体力はありそうだけれど、一応人間だ。あたしがやって無事だという保証には、十分なると思う。いくらあたしが運動音痴だとしても。
そろそろと崖に近づいて、あたしは深々と息を吸い込んだ。
「ベラ」
力強くもあり、優しくもある、あのベルベットのような声がよみがえる。
「やめるんだ、こんなこと」
無理よ。あなたはあたしに人間でいることを望んだんでしょ。あたしはその通りにしてるだけ。
もう、あたしは生きていても何もできないんだもの。だったら少しくらいおもしろくしたっていいはず。
つま先で崖の感触を楽しむ。
空気が冷たい。あたしは思いっきり息を吸い込んだ。
大丈夫、死にやしないって。こんなことで。
現に、ラプッシュの子たちがやってたでしょ。
楽しそうじゃない。
そしてあたしは飛び込んだ。
冷たい海の水が全身を覆う。
やった、飛べた。あたしの中には快感しかない。
ほらね、大丈夫だった。こんなにスッキリしたのは、あの別れ以後初めてかもしれない。
あたしはそこで急に息が苦しくなった。
あれ?
まるで心臓が凍ったみたいに体中が冷たい。
あたしはどうしたんだろう。もしかして心臓発作とか?改めて息を吸おうとして、ここは水の中だと気づく。
あ、そうだ。戻らなくちゃ。
でも体が動かない。
息がどんどん苦しくなっていく。あたしは一生懸命もがいた。でも体が上がっていかない。
もう、いいや。
あたしはふっと笑った。こんなときに笑えるなんて、自分でもビックリ。
意外と人って、楽に死ねるのかも。
エドワード。
思い出さないようにしてた名前をそっと引き出してみる。
もう思い出しても大丈夫よね。あたしは死ぬんだから。
ごめん、エドワード。約束は守れなかった。
きっとチャーリーやママ、ジェイコブを傷つけることになる。それだけが心残りだけど、ごめんなさい。あたしはもうこの世で生きていても意味を見出せないの。つらいだけ。苦しくて、今こうして水の中で苦しんでるみたいな状況。
だから、もう解放されても許されるだろうか。
死ぬ前にとっておきの映像を思い出す。まさにこの瞬間のためにとっておいた、エドワード。ほら、あたしを見つめて笑ってる。あの赤銅色の髪が、風にたなびいて。
エドワード。愛してる。
あたしがゆっくりと目を閉じた途端、その声が響いた。
「ベラ、だめだ!泳ぎ続けろ!!」
なぁに?あたしは目を開ける。
今さら、無理よ。そう言おうとして水が入ってくる。思わず口を閉じる。
あの完璧なエドワードが目の前にいた。
エドワード。驚いて声が出ない。
「手を動かすんだ。戻れ、早く!!」
頭の中で声ががんがん響く。
どうして?ぼーっとした頭のままで、あたしは必死で手と足を動かした。
ここで止まっちゃダメ。そう何かがあたしに向かってささやく。
その途端、誰かがあたしの体を引き上げた。
意識が遠ざかる。
目を閉じる最後の瞬間、あたしは視界の隅に真っ赤なものを見た。何だろうと思ったけれど、エドワード。浮かんだ言葉はそれだけだった。


胸をどんっと押されて口から海水があふれる。苦しくて嗚咽がもれた。
「ベラ、返事をしてくれ!痛いところは?」
「のど・・・だけ」
何だかカエルがつぶれたような声だと、自分で思った。
「もう、大丈夫だろう」
男の子たちのささやき声が聞こえる。多分ラプッシュの子たちだろう。ジェイコブと仲がいい子。きっと探しに来てくれたんだ。
あたしは何てことをしたんだろう。
ホントにチャーリーが心臓発作を起こしちゃうところだったかもしれないのに。たとえ、あたしにその気がなくても。
あたしはため息とともに、水を吐き出した。
のどがひりひりと痛い。
海水を飲みすぎたから、きっと今夜はのどが渇いて仕方ないに違いない。脱水にならないように、水分をたくさん取らなければ。
「ベラ!」
鼻のすぐ先で水に濡れた黒髪が揺れる。
あたしは目の前にいるジェイコブをぼんやりと見つめて、さっきのエドワードを思い出していた。
エドワード。さっきの彼は、間違いなくあたしの想像の産物だ。
幻聴の次は、まぼろしか。
もしかしたら、ホントにあたしは狂いかけてるのかも。ところであの赤いものは何だったんだろう。
気になるけど、今は思考が停止してて何も考えられない。
「ジェイコブ、ホントにごめん。ありがと」
のどが痛くて声が掠れてしまう。
けれど、あたしはのどの痛み以上に気をそらすような考え事をしていて、気にはならなかった。むしろ今の頭の中はここ数ヶ月間で、一番冴えてるかもしれない。
「ホントにびっくりしたよ。もうこんなことやめろよ」
少し怒ったような声を聞いて、あたしは本当に彼があたしのことを心配しててくれたんだと、改めて思った。罪悪感で胸がいっぱいになる。
「うん。ごめんね、ジェイコブ」
つぶやいて、あたしは意識を手放した。

(あとがき)
海の中で見えた赤いものは、実はヴィクトリアだったわけですが・・・無事に助かったベラ、良かったです。ジェイコブの気持ちを考えると切ないシーンでもありますね。

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