Eternal wonder
なごみまくりの徒然日記。暇つぶしにどうぞ。

スポンサーサイト                 

一定期間更新がないため広告を表示しています

: - : - : - : posted by スポンサードリンク :
儚き白昼夢                 

もしも、あの時君を置いて去ることがなかったのなら―――。
ぼくは今、君の中で絶対的な一番でいることができたのだろうかと考えることがあるんだ。
だけどその考えはすぐに打ち消される。
たとえ、ぼくが君の前からいなくならなくても、いつかはやってきた。こんな風に苦しんでもそれが当然だと思えるかどうかは別にしても。
それでも、迷いはきっと消えない。


「エドワード?」
突然身体を強張らせたぼくに、ベラは不安げに目を瞬かせた。
「大丈夫」
安心させるように耳元でつぶやいても、ベラの不安は収まらなかったようで、おどおどと辺りを見渡している。遠くから聞こえる狼人間の唸り声を無視して、ぼくはトレーに食事(あくまでもベラの、だ)を次々とのせた。
「ベラ。好きなものを取って」
小声で言うと、ベラはぎゅっと唇をかんでこちらを見た。
「どうして教えてくれないの?」
「何を?」
わざとらしく驚いてみせると、ベラは眉をひそめた。
「わかってるでしょ。何が起こるの?」
「別に何もないよ」
「嘘よ」
「嘘じゃない。ベラが心配してるようなことは起こらない」
「あたしの心の中は読めないでしょ?」
ぼくは鋭い口調に降参して、ため息をついた。
「別に大したことじゃない。ただ、ちょっとしたトラブルってだけさ。学校のすぐ近くにジェイコブがいて、マイクたちと一緒に雑談してるってだけだよ」
「ジェイコブが、マイクと?」
その口調に込められた悲しみと純粋な驚きとに、ぼくは改めて素知らぬ振りを通した。
たった1週間前、ぼくたちは命がけの戦いを終えたばかりだった。
吸血鬼の街で、ヴォルトゥーリ一族の餌食になるところだったけれど、何とか助かってぼくたちの平穏は戻ってきた。
それ以来、ジェイコブとは会っていない。会えない、といった方が正しいかもしれない。ぼくたちは、もう別々の世界の住人になってしまった。かつてもそうだったことに違いはないけれど、でもその小さな溝は今は決定的な違いになってしまった。
吸血鬼と、狼人間。
どう考えても、彼らが一緒にいることはありえない。敵としていがみ合うか、避けあうかのどちらかしか選択肢は残っていない。
ベラは今でも、ジェイコブと会いたいと思っている。口に出しては言わないけれど、何となくわかる。彼がつらい思いをしているんじゃないかと、心配しているし、寝言でもたまに出てくるその名を聞くたびに、ぼくは切なさと寂しさを同時に味わう。自業自得という言葉を、これほど実感したのは多分これが初めてで。
「ごめん」
「えっ?」
ぽつりとつぶやくと、ベラは驚いたような表情でぼくを見た。
君をジェイコブに会わせるわけにはいかないんだ。そう心の中でつぶやいて、ぎゅっと手を握ってぼくはトレーの中身を全てゴミ箱の中へ投げ捨てた。
「行こう」
「ちょっと、エドワード!!どこへ行くのよ?ジェイコブたちはどうなったの?」
「君が心配することじゃないよ」
強張った笑みを浮かべ振り返った瞬間、その場にぼくは硬直した。
どうして。どうしてここに現れる?ジェイコブ、どうして君が?
ぼくの視線を追ったベラが、息をのむ音が聞こえて、ぼくは顔をゆがめた。こうなる前に、ベラを連れ出すべきだったのに。苦い後悔がぐっとこみ上げる。
「ベラ、行こう」
再び手を引くと、ジェイコブが口を開いた。
「逃げるのか、エドワード!!」
声とともに、ねめつけるような視線を投げかけられ、ぼくは唇をかみしめた。どう考えても、ここで戦うのは明らかにまずい。自分たちの正体を知られるばかりか、ベラにも危険が及ぶかもしれない。どうしてあいつはマイクと一緒にいたりするんだろう。余計に事が厄介になる。
アリスはどこにいるのか考えながら、ぼくはジェイコブを睨んだ。
「ベラ。先に急いでここを出るんだ」
カフェテリアの中で、明らかに注目を集めているであろうこの状況から、何とか脱出したかった。
「待てよ。ベラにもいてもらいたいな」
ジェイコブの声に、ベラは迷ったような顔をしていたが、少し考えてぼくを見た。
「エドワード。ここはあたしにまかせて?」
「だめだ。絶対に」
狼人間をベラに近づけるなんて。ゾッとしてぼくは眉をひそめた。
「エドワード、大丈夫よ。ジェイコブだって、マイクと一緒にいるくらいだもの、何もしないわ。それに、いつかは話さなきゃいけないって、わかってるでしょ?」
「ベラ、頼むよ。今だけはぼくの言うことを素直に聞いてくれ。ちゃんとアリスに迎えに来させるから」
「エドワードってば・・・」
ため息をつくベラを見て、ぼくは顔をそむけた。
ジェイコブから彼女を引き離そうとしている本当の理由は、危ないからというだけではないことに、いい加減自分でも認めざるを得なかった。本当は、恐れているんだ。ベラが、ジェイコブに惹かれることを。自分のもとから去っていくことを。
このことも、そんな自分が嫌なことも、ベラには決して言えない秘密だけれど。
「マイクがこっちに来るわ」
ふと耳元でつぶやかれた言葉に、ぼくははっと顔を上げた。
「いったい何のつもりだ?」
イライラとするのを抑えられないまま、ぼくはマイクを待ち構えた。
「あのさ、ジェイコブがお前と勝負したいって言うんだ。その・・・ベラに誰が一番ふさわしいかを決めるために」
「そんなバカなことをするつもりはない。ベラが嫌がるからね」
少し遠慮したようにベラの方をちらっと見るマイクの目つきに、ぼくは唇をぎゅっとかみ締め答えを唸るように言い返した。
「本当にそうかな?」
突然背後から聞こえる声と威圧感に、ぼくは全身が嫌悪感に浸るのを実感した。
「ジェイコブ・・・どうしてここに来た?お前とぼくが同時にここにいるのは、良くないことだとは思わなかったのか?」
「まーね。でもさ、これは全部ベラのためだよ。ベラに本当にふさわしいやつが、一緒にいるべきだとは思わない?」
「少なくともお前に言われる筋合いはない」
いがみ合いのような状況で、意外にも口を挟んだのはマイクだった。
「あ、あのさ、何でそんなに喧嘩みたいになってるのか知らないけど、何だったらベラに決めてもらえば?その・・・勝負をするかどうかは。結局、相手はベラなんだし」
一斉に視線が集まったベラは、今にも泣きそうな顔でただそこに佇んでいた。
「ごめん、ベラ。勝負なんて、嫌だろう?君が嫌がるなら、やらないから心配しなくていいよ」
慌てたようにぼくが言っても、ベラは黙って首を振って地面を見つめている。
困ったようにぼくがそっとベラの手を握ると、やっと彼女は声を出した。
「今やらなくても、二人でこっそりやるんでしょ?だったら今あたしの前でやって。もう隠し事は・・・嫌」
最後にぽつりとつぶやかれた言葉に、ベラの本心が隠されているような気がして、ぼくは顔をゆがめた。
「ごめん」
かすかな声が届いたのだろう、ベラは少しだけ顔をあげてかすかに苦笑した。
「その代わり、条件があるの。絶対に、相手に怪我を負わせたりしないこと。血を見た瞬間に、やばいことになるのはお互いわかってるでしょ?」
「いいよ。喜んで相手になる」
いかにも軽いことのように言い放ったジェイコブは、かすかに腕を震わせた。
「ジェイコブ、あなた大丈夫なの?腕が・・・」
不安げにつぶやくベラに、ジェイコブは気丈にも豪快に笑って見せた。
「俺か?俺は平気だよ。そこのエドワードはどうだか知らないけど」
「ぼくは君を恐れたりなどしない」
「どうだかな」
互いににらみ合う感じになった二人の前に、再び邪魔が入った。
「あのさ、俺も混ぜてもらってもいい?」
「は?!」
マイクの提案に、度肝を抜かれたのはベラだけではなかった。
「お前が?」
「あんた、体力的に無理だと思うけど」
エドワードとジェイコブの言葉にもめげず、マイクはさらに言い募った。
「別に参加するだけなんだからいいだろ?」
「まぁそりゃそうだけど・・・」
ベラは不安げにぶつぶつと言っている。
きっと吸血鬼や狼人間の存在がバレるのではないかと心配しているのだろう。



「じゃぁ何で決める?体力か、知力か?」
ジェイコブの言葉に、エドワードがふぅと息を深く吐いた。
「何で勝負するかは、ベラに決めてもらうのが筋じゃないのか?」
「えっ?」
「何がいい?君にふさわしいと決めるのに、必要な要素は何?」
エドワードはジェイコブやマイクの言葉を代表して言ったのだろうけれど、あたしには彼の滅多に見せない苦しみがその言葉に隠されているような気がして、思わず言葉に詰まった。
「ベラ・・・?」
どこまでもあたしのことを考えてくれるエドワード。
あたしがどんなにひどいことを言っても、多分彼はあたしのことを優先してくれる。ありえないぐらいに、自己犠牲本能が強いから。
悲しいぐらい、あたしはエドワードを頼ってばかりだ。
そばにいないと苦しくなるし、これ以上大切にしてもらうことなんてできないのに、それでももっと愛してほしいと願ってしまう。
こんなにも自分勝手なあたしを、エドワードは好きでいてくれてる。
「ごめん、やっぱりだめ。あたしには・・・耐えられそうもない」
「どういう意味だ?」
「ベラ?」
エドワードの無言の困ったような表情と、ジェイコブとマイクの言葉に、あたしはうつむいた。
「ごめんね。やっぱりあたしは勝負なんてやってほしくない。たとえどんな勝負を何十回とやっても・・・あたしにはエドワードしか考えられないの。わかってくれるでしょ?ジェイコブは家族のような意味では愛してる。マイクだって、いい友達でいてくれる。でもね、エドワードはあたしにとって命よりも大切なの。あたしには、選択肢がないの」
つぶやくように言われた言葉に、エドワードは彫刻のように固まっていた。
「ベラ・・・。ごめん、やっぱり勝負なんてバカなことはしないから。もう、帰ろう」


「おい!!」
駐車場の前まで来たとき、背後から声が届いた。
振り向くと、カフェテリアの前でジェイコブが立ち尽くしている。
「ジェイコブ・・・」
かすかにつぶやいたベラの腰をぎゅっと抱き寄せ、ぼくは眉間にしわを寄せた。
この上まだ喧嘩を売るようなことを言うのだろうかと身構えたぼくの予想とは反して、ジェイコブは再び叫んだ。
「ベラのこと、ちゃんと守ってやれよ!また一人にするようなことがあったら・・・ベラを泣かせるようなことがあったら、俺はもう許さないからな!」
「ジェイコブ・・・」
ベラの驚いたような瞳を覗き込んで、ぼくはかすかに微笑んだ。
「わかってる。ぼくは、絶対にベラを幸せにしてみせる」
ありがとう。ささやかな思いだけれど、いくら感謝してもしきれない思い。
声には出さずに、そっとつぶやいた思いは、きっと君の心へ届いただろうか。


「エドワード」
アリスは無言で振り向いた赤銅色の髪をした弟に、改めてため息をついた。
別に格段防ぐことじゃないかもしれないけど、狼人間の近くにいるのは驚くほど危険なのに。
ましてや、ベラや他の人間がいる場所でなんて。
「あなたね、ベラだけで十分トラブルを引き起こしてるんだから、これ以上の問題を起こさなくていいのよ。それとも今の状況じゃ、そんなに不満?」
「何のことだ、アリス?」
訝しげに訊ねられた問いに、アリスは無言で肩をすくめた。
「とにかく、今日は学校へ行かない方がいいわね」
まだエドワードは不思議そうな顔をしていたが、最後にはこくりと頷いて部屋を出て行った。
きっと、ベラに学校を休むよう説得しにいくのだろう。
こうやって、たまには白昼夢に浸ると良いこともあるわね。
アリスは、面倒事を防ぐことができた自分に、一人満足げに微笑んだ。
「さぁ、あたしも今日はサボってジャスパーと一緒にいてもばちは当たらないわよね?」
乙女のような足取りで、アリスはジャスパーのもとへ向かうのだった。

続きを読む >>
: 版権関連 : comments(0) : - : posted by なごみまくり :
I wish                 

息が詰まりそうな空気の中、俺は黙って佇んでいた。
皆が気をつかってくれているのがわかればわかるほど、俺のプライドは傷つき、だんだんと闇の中へ堕ちていった。まるで深海の中にいるようだった。
ベラ。いつかは君のことを穏やかな目で見守ることができるようになるのだろうか。
言葉の刃で君を傷つけたことを、幼い頃の戯れだと笑って片付けられるときが来るのだろうか。
多分、来るとしてもそれは遠い未来の話で、今は絶対に考えられないことだ。
そう自分の中でつぶやくと、俺は黙って視線をゆらがせた。
ここに来るのは、いつもつらい。
狼になっているだけに、周りのやつらには心の中が筒抜けだ。その上に、この森はベラとの思い出がありすぎた。
「普通の」人間として、ただ気楽に生きていればよかったあの頃。
たくさんの会話が耳によみがえるような気がして、俺は目を閉じた。
そして、あの事件。
あれから1ヶ月が過ぎ去った今でも、俺の気持ちは何一つ変わってはいない。
心の底から好きになった人が、人間としての人生を終え吸血鬼になってしまうなんて、誰が想像できるだろう。おまけにその人が自ら進んでそうなったなんて。
もしも何かの事故でそうなってしまうのなら、まだ怒りをぶつける相手がいるだけいい。
けれど、ごめんなさいと切なげにつぶやいて去っていった人に、どう怒れというのだろう。
今でも、もしもベラの気持ちを掴むことができていたら、彼女は人間として幸福な人生を送ることができたのにと思うことがある。
あのときあの女占い師が現れなければ―――。
深い悲しみに似た後悔は、とどまることなくあふれてくる。
昔のように、どうしようもなくて暴れてただ毎日を過ごすだけだったのよりはマシになったけれど、今でも胸の奥がひきつれるように痛むのは変わらない。
黙って深呼吸を繰り返す俺を、サムはただそばで見つめていた。
表情こそ無表情だったけれど、その目には深い同情が流れていた。俺のつらい気持ちを、最も近く感じているからかもしれない。かつての自らの後悔とともに。


だいぶ前の話だ。
サムが狼になったばかりの頃、リアと別れたとき。
リアに本当のことを話せずに、サムはひどく苦しんだ。今も苦しんでいるのは同じだけれど。
そして、違う意味の苦しみも体験せざるをえなかった。
エミリーの傷。あの傷を見るたびに、サムがつらい思いをしているのは、みんなが知っている。
そして、エミリーを普通だったらありえないぐらいに愛しているということも。
"刻印"という名の謎のものによって、愛する人を決められるなんて理不尽だと思うのは俺だけだろうか。
多分、本当に刻印が自分に降りかかれば、そんなことは思いもしないんだろう。
だけど、今の俺には多分理解できない代物だ。
ベラを好きだったころの自分を忘れるようなものだ。そんなの耐えられない。
だけど、実際にクイルにも起こった。
サムだって、リアと付き合っていたのにも関わらず刻印は現れた。
俺には現れないと、どうして断言できる?
もしも現れたら、ベラのことをすべて諦められるのだろうか?
そうしたらベラは安心するんだろうなぁとぽつりと考える自分に嫌気がさして、俺は気を紛らわせるように辺りの景色をただ頭の中へインプットし続けた。


「ジェイコブ、ここを任せてもいいか?」
突然静寂を破ったのは、エンブリーだった。
今、俺たちは境界近くの森で、パトロールをしている。もっとも、カレンたち―この名を思い出すたびに、胸の奥がずきんとする―がここフォークスを去ってからは敵なんて一人も現れていないけれど。
「・・・あぁ。大丈夫だ」
「クイルとお前は反対側のビーチを見て来い」
サムの指示にエンブリーとクイルは頷いて、勢いよく走っていった。
再びあたりが沈黙に包まれ、俺の近くにはサムだけになった。少しだけリラックスできるような気がして、俺はぎゅっと握っていた手を少しほどいた。
狼人間になる前はサムのことを毛嫌いしていたんだっけ。
ぼんやりとそんなことを思い出し、俺は少しだけ笑みを浮かべた。そうだ、ベラと一緒になってギャング呼ばわりしたこともあったな。今じゃ、笑い飛ばす冗談にもなりはしない。
「まだ大変なんだな」
ぽつりとつぶやかれた言葉に、俺は驚いてサムを見つめた。まるで独り言のような声だった。
「えっ・・・?」
「見てればわかる。つらいんだろう?」
俺はぎゅっと唇をかんだ。皆の前ではできるだけ見せないようにしてきたつもりだった。でもやっぱりサムにはいつも見抜かれてしまう。
「あぁ」
「きっといつかは笑えるようになるだろう。それまでの我慢だ」
サムの無表情な目に、少しだけ哀愁が漂った気がして、俺は目を瞬かせた。
「はい」
「もっと周りに頼ってやれ」
そう一言言うと、サムは俺に向かってそっと微笑んだ。


眠りにつく前に、一枚の写真を見る。出来上がったばかりのバイクの前で、ベラと並んで撮った写真。エドワードがいなかったときだ。
赤い光沢を放つ、鮮やかなバイクの前でピースサインをするベラの姿は、いつ見ても変わらない。
もし望めば、今すぐにでも会えそうな雰囲気に、俺は力を入れすぎた指をゆっくりと写真から引き離した。間違って破きそうになるたびに、俺は慌てて手を離す。
もう手放して忘れてもいい頃なのに、こんな風だからいつまでも吹っ切れないのかもしれない。
そう思って、俺は闇の中で一人ため息をついた。どこまでも一人になりたいと願いながらも、それでも一人で生きていく強さがない自分に、どうしていいかわからない。誰か、いやベラにそばにいてほしいと思いつつも、もしも出会ったら反射的に襲い掛かってしまうかもしれないとも思う。
矛盾する気持ちを抱えたまま、俺はベッドへ倒れこんで目を閉じた。
「俺は何にもできない出来損ないだな・・・」
苦笑してつぶやくと、夜空の星が暗くなったような気がした。
ゆっくりと眠りに落ちる直前、彼女の声がぼんやりと遠くに聞こえたように思えたけれど、そのまま夢の中へと俺はいざなわれていった。


いつもよりずっと晴れた昼間。
うっそうとしているはずの森にも、太陽からの明るい光が颯爽と差し込んでいる。まぶしさに目を細める仲間たちに俺もならう。
「クイル、ちょっとあっちに行ってくる」
普段の小道から離れた場所を指差し言った俺に、クイルは訝しげな顔をした。
「どこへ行くんだ?」
「ちょっと、用事を思い出した」
まともな言い訳を考えてくるべきだったと後悔しつつも、俺はぼそりとつぶやいた。
「サムには言ってあるから」
これはウソだ。そんなことを言ってあるわけがない。
でもこれは、どうしても一人で行きたかった。他人がいたら、自分が求めたものは見つからないような気がした。
「そうなのか?じゃぁ、俺がこれから先は見ておく」
「サンキュ」
なぜか切なさがこみ上げてきて、泣き笑いのような表情で言うと、さすがにクイルは変な顔をした。
「お前、何かあったのか?」
「・・・別に」
慌ててふいと外を向くと、クイルは首をかしげながらも通してくれた。
「お前、夕飯までには帰ってくるんだろ?間に合わないなら俺が代わりに食っといてやる」
「あぁ、帰るから心配ない」
振り向きざまに答えると、クイルのわざとらしいため息が聞こえて俺はくすりと笑みを漏らした。


きつい山道を登りながら、俺はぼんやりとここを探していた頃のことを思い出していた。
ベラが探したいと言った場所。そこで運悪くも(ベラのことを考えると運が良かったのだろうか?)ローランという吸血鬼に出くわした。
今思えば、きっとあの場所はエドワードとの思い出の場所だったのだろう。
俺には話さなかったけれど、あの頃のベラは何かとあいつにつながるものを探し求めていたような気がする。多分、探したい反面傷つくことを恐れていた。だから俺にも頼んだりしたんだろうなとぼんやりと思って、俺は苦笑した。結局俺は使いまわしの道具か。
それでもなぜか怒る気にはなれないのがベラだった。
きっと、それほどに好きだったんだと、今さらに気づく。
多分、ベラがあいつを好きでも、全然関係なかった。ただそばにいられれば満足だったから、あんな風にずっと友達のようにいられた。
あいつをライバル視しながらも、心のどこかでベラはあいつを選ぶとわかっていたのかもしれない。だから、最初から強気だった。負けても胸をはれるように。


たどりついた草原で座り込むと、俺はばったりと横になって流れ行く雲をじっと見つめた。
こんな風に穏やかで何も考えずに過ごすのは久しぶりかもしれないと思う。
狼になったときだって、何かは頭の中にあった。多分、何かは。
頬をなでるあたたかい風に目を細めながら、ジェイコブは黙って起き上がった。
「ここによく来てたんだろうな」
多分、ここはベラとあいつにとって幸せの象徴の場所だったんだろう。だから、こんなにもこの草原は輝いてる。
「・・・まるであいつみたいだな」
誰よりもキザで、カッコつけの吸血野郎。
そう心の中で悪態をついた後、俺はぎゅっと目を閉じて考えた。
だけど、ベラを大切に想うことにかけては、俺と同等かな、と。
俺もきっとまた恋をする。
そのときまた出会えても出会えなくても、君の幸せを願ってるよと、誰も答えることのない空にそっとつぶやいた。

続きを読む >>
: 版権関連 : comments(0) : - : posted by なごみまくり :
世界の中心                 

木漏れ日の中で、きらきらと輝いて見える人は、あたしのソウルメイトだ。
今でも信じられないぐらいの幸運に出会えたことに、今さらながら心から感謝する。
エドワードみたいな完璧な人が、あたしの目の前にいること自体が奇跡だもの。
たとえトラブルに100件見舞われたとしても、エドワードがいてくれるならどんなことだって耐えられるような気がする。
そんなことをぼんやりと考えていると、近くで走り回っていたエドワードがすぐそばにいた。
「どうしたの?」
ベルベットのような、なめらかな声。
半ばうっとりとしながら、あたしは軽く首を振った。
「ううん、何でもないわ。そんなことより早く草原まで行きましょ?」
「そうだね」
エドワードは輝くような歯を見せて笑うと、手をそっとつないだ。
「君はまだ走るのが苦手?」
「走るのはあたしじゃなくて、あなたでしょ?」
そう言いながらあたしは苦笑した。
「でも、もう大丈夫。あたしも少しは慣れたみたい」
「それは良かった」
エドワードはするりとあたしの手をほどくと、背中にあたしを乗せようとした。でもすぐに動きが止まる。
まるで彫像のような感じのエドワードに、あたしは戸惑った。
「どうかしたの?」
「いや、早く着くよりもこうやって君とゆっくり行った方が楽しいかなぁと思って」
そう言いながら、自分の指をあたしのにしっかりからめてにんまりと笑う。
頬が真っ赤になったあたしに、エドワードは切なげに笑っておでこにキスをした。
「やっぱり、こうやって頬が赤くなるのがかわいいんだよな」
「嘘ばっかり」
小声でつぶやいたあたしの声は、もちろんエドワードに聞こえてしまう。
「嘘なんかじゃないさ」
うるんだゴールドの瞳が、目の前にある。
そのことに動揺したあたしは、思ったとおり息が吸えなくなってぜいぜいとあえいだ。
「ベラ」
呆れたように言いながらも嬉しそうなエドワードを軽くにらんで、あたしはするりとエドワードの腕を逃れた。
「もう、あなたが話題をそらすからいけないのよ。さっさと行きましょ?」


草原はあたたかな空気に包まれ、ふんわりとした草はまるで羽毛のようだった。
「もうすぐね、入学式」
明るい太陽の光を浴びてきらめくエドワードの腕をそっとなぞりながら、あたしはつぶやいた。
あっという間に長期休暇が過ぎていくような気がする。
「あぁ。結婚式もね」
返された言葉に、思わず顔をしかめる。
「あなたはそればっかり」
不満げにうめいたあたしを見て、エドワードはくすくすと笑った。
「君が承諾したんだってこと、忘れるなよ」
「ホント、とんだバケモノと結婚することになっちゃったわよ。絶対後悔するわね」
苦笑気味につぶやくと、突然エドワードは真面目な顔つきになった。
「君を、後悔なんてする暇もないぐらいに幸せにするよ」
その口調に合わせて、あたしも真剣になる。
前よりは、エドワードの気分の波についていくのが大変じゃなくなった。きっと転生したら、もっと楽になる。それがあたしの喜び。
「わかってる。でもあなたのそばにいるのを後悔なんてするわけない」
「だといいけどな」
一転して、エドワードの口調は普通に戻る。
あたしもリラックスして、彼に体を預ける。そっと髪をなでてくれるのが嬉しくて、あたしはゆっくりとエドワードの胸にすりよった。
「もし―――ここに戻ってこられなくなったら、二人で南の島に行くのもいいかもね」
つらいことだけれど、考えなくてはいけないとわかってる。
エドワードはいつもあたしに気を遣ってくれるけれど、それで問題から逃げられるわけじゃないもの。
「北極や南極はどうしたの?ベラ」
あたしが無理に明るい声で話しているのがわかったのだろうか、エドワードも明るい口調で返してくる。
「まぁそれもいいけど、あたしはあったかい方が好きだし」
「それはそうだ」
おかしそうなエドワードに、あたしはぎゅっとしがみついた。
これから言うことは、あたしにとってまだ癒えていない傷を針でさすようなことだ。だから、つらそうな顔を見られないように。
「ジェイコブとはもう会えないと思ってる。だから・・・」
「ベラ、無理しなくていい。まだまだ考える時間はある」
「そうよね。あたしが転生するまでの、あっという間の時間ならね」
思わずとげとげしくなったあたしの口調に、困ったようにエドワードが息をつくのがわかった。
「ベラ・・・」
「だから、今のうちから慣れておかなきゃいけないの。自分でもわかってるのよ」
大丈夫。言い切った。声もかすれてない。
エドワードには気づかれなかったはず。あたしが泣きそうだってことは。
「ベラ、完全に会えないと決まったわけじゃない。もし君が望むなら、このままでいることだって可能なんだよ」
エドワードが暗に言ったことがわかって、あたしは息をぐっとのんだ。
エドワードは、あたしが転生することに好意的ではない。はっきり言って、できるならこのまま人間でいてほしいと思っている。魂が救われないかもしれないなんて、あたしにとってそんなことはもうどうでもいいのに。
だからこうやって、あたしの心が揺らぐ瞬間に意見を持ち出してくる。
「あたしの最大の望みはわかってるでしょ」
最大の、のところを強調して言い返すと、エドワードは不安げに瞳を瞬かせた。
「だけど・・・君はジェイコブ・ブラックのことが話題になるたびにすごく・・・つらそうな顔になる。ぼくは思うんだよ。これで本当にいいのだろうか、と。ぼくよりも、あいつのそばにいるほうがベラにとって幸せなんじゃないかと」
あたしは顔をしかめた。今までどんなに胸の傷がうずいても、出来る限り冷静な顔をキープしてきたつもりだったのに。エドワードがいなくなったときもそうだったけれど、あたしは冷静なフリをする能力が人一倍劣ってるんじゃないだろうか。
「そんなはずないって、自分でもわかってるくせに」
あたしの言葉に、エドワードは顔をゆがめた。
「そんなことない」
「ウソよ。だってエドワードは誰よりも―――あたしには理解できないぐらい―――あたしのことを大切に想ってくれてる。もしもジェイコブのところにいる方が安全で、あたしにとってそれがベストなら、たとえあなたの望みに反してもあなたはそうするでしょ」
エドワードは諦めたような顔をして、少しだけ微笑んだ。
「そうとも限らないよ」
「どうして?」
「ぼくは自分の望みを突き通すかもしれない」
もうすでに突き通してるけどね、というかすかなささやきは無視することにする。
あたしはぎゅっと眉をよせて、何もない空間をにらんだ。
エドワードは本当に話をそらすのが上手い。それだけは認める。
「ところで、転生した後はやっぱり人がいないところがいいわよね。やっぱり南の無人島かな」
「ベラ、その話はもうやめよう。今でなくてもいいんだから」
自分が強情なことはわかっている。それでもあたしは話を続けようとした。
「それとも南極がやっぱりベターかな。でもアリスたちは嫌がるかもね」
「ベラ・・・」
「エドワード、あたしもうこれ以上逃げたくないの。今まであたしはさんざん嫌なことから逃げてきた。だけど、それで問題が解決するわけじゃないでしょ?もしかしたらジェイコブの傷が癒えればあたしの傷も癒えるのかもしれない。もしくはジェイコブの傷が癒えてもあたしのは癒えないのかも。だけど、どっちになるかは誰にもわからないの。それを待つのは、とても無理。この痛みを抱えながら生きていくのがあたしの義務なのよ」
ずっとこの何週間か考えてきたことを言葉にするのは、思ったよりも難しくなかった。
「わかってくれるでしょ」
かすかにつぶやくと、横から小さなため息が聞こえた。
「わかってたよ。そうやって君は何でも一人で背負おうとするって」
あたしは少しだけ苦笑した。
「でもね。エドワードがいてくれるから、あたしは大丈夫。たとえこの痛みが永遠に消えなくても。あたしにとって、なくてはならないものはわかってるもの。あたしの中で、世界の中心はあなただけだから」
エドワードは呆れたように首を振るとつぶやいた。
「君はぼくのことを買いかぶりすぎてるよ」
「そうかしら?」
「あぁ、そうさ」
少し乱暴な口調でエドワードは言うと、突然あたしの上に覆いかぶさった。自分の体重があたしにかからないように支えてはいるけれど、瞳の奥では楽しそうな感じ。
「世界最高の肉食獣が世界の中心だなんて・・・。君はやっぱりトラブルを引き付ける磁石だよ」
「でもあたしもその仲間になる。だから危険じゃなくなるでしょ」
重要な点を指摘すると、エドワードは顔をしかめた。
「まあね」
やっぱり認めたくないみたい。勝ち誇ったようなあたしの表情を、エドワードはじっと見つめた。
「でも知ってる?ぼくにとっての世界の中心も君なんだよ、ベラ」
一瞬だけ鼓動が止まり、また動き出す。
「そう言ってくれると思ってた」
あたしはかすかに聞こえるかどうかの声でささやいた。


あたしの世界の中心が永遠にエドワードであるように、彼の世界の中心もあたしであってほしい。
そう、心の中でそっと祈る。

続きを読む >>
: 版権関連 : comments(0) : - : posted by なごみまくり :
: 1/7 : >>